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2013年度第2回採集観察会兼RDB調査の報告

期 日:2013年6月2日(日)
場 所:鈴鹿市小岐須町 小岐須渓谷(N34°57′25.9″、E136°25′56.3″)
鈴鹿市地子町 金生水沼沢植物群落(N34°52′4.9″、E136°33′40.6″)
参加者:貝發憲治,熊田憲一,前原 晋,武藤茂忠,太田定浩,塩崎哲哉

調査風景  本年度も昨年度に引き続き第2回の採集観察会までは,三重県版レッドデーターブック改訂のための調査を兼ねて行うということで,今回は最近鈴鹿市の国の天然記念物に指定されている金生水沼沢植物群落で確認されたという絶滅危惧U類のワスレナグモと,同じU類のカネコトタテグモが確認された鈴鹿市の小岐須渓谷を調査しようと計画された.当初の予定では午前10時に金生水に集合して調査した後,小岐須調査風景へ移動することにしていたが,市の委嘱を受けて金生水沼沢植物群落調査員の役員をしていて,今回の調査の世話をお願いした市川雄二先生から朝電話があり,午前に急な市長の視察があるので,調査は午後にして欲しいとの事であったので,集合後予定を変更して先に小岐須渓谷へ行くことにした.屏風岩キャンプ場の駐車場に車を停め,以前の調査で確認されたという入道ヶ岳登山道の道沿い斜面の崖地を,参加者6人がそれぞれ目を凝らして両開きの扉を持ったカネコトタテグモの住居を2時間近く探したが,残念ながらとうとう誰も見つけることが出来なかった.午後1時前ここで昼食をとった後金生水へ向かった.

金生水沼沢植物群落   市川先生も来て頂いていて,金網のフェンスに囲まれている天然記念物指定地の入口の扉は開けられていたので,入ってすぐのグレーチングをはめ込んだ所で靴の土を落として敷地内へ入った.靴裏に着いた種子などによる外からの植物の進入を防ぐためというが,入ったすぐの辺りにはかなりのオオバコがすでに生えていた.この金生水でのワスレナグモの発見については,筆者が関係しているので,その経緯について記しておきたい.

  2011年5月11日調査員の青山貴美子さんが,指定地のほぼ中央にある裸地の地面に開いた直径約5mmの穴から,クモらしきものが黒褐色の足と体の一部を出している様子を撮影した写真を,市川先生が持って来られ同定を依頼された。図鑑で地中性のクモの中から,穴の入口に扉のないワスレナクモかもしれないと思い,ワスレナグモをまだみていないのでいくつかの文献を調べたところ、中部蜘蛛懇談会会員の永井均さんの論文に,巣穴から頭部と脚の一部を出しかけている写真があり,青山さんの撮られた写真と非常によく似ていたことと,市川先生に案内していただいて筆者が現地を訪れて,青山さんの写真と同じような場面を撮影したことから,迂闊にも網の確認をしないままワスレナグモであろう同定し,その旨市川先生に連絡してしまった.市川先生はその後金生水の地域一帯を調査されて,多数の巣穴を確認されたほか,地域の一部に方形枠を設定し巣穴数の消長を月に1回調査されるという念の入れようで,その間度々一緒に調査させて頂く中で,巣穴の入口周辺に糸が見られない事と,時々穴を掘ってみたがクモが採れないことに気づき不安になり,そのことも市川先生にも申し上げ今回の確認ということになった.そしてその結果はワスレナグモではないということになった.では何の穴かということでは,穴を掘って芋虫状の太さ3mm長さ2cmほどの幼虫も確認したことから,ハンミョウ類の巣穴であろうとなり.ワスレナグモは誤同定であったことが確定した.誤同定をした筆者の責任は重大で,関係の方々に大変なご迷惑をおかけしたことになってしまった,とりわけ市川先生はじめ青山さんその他の調査員の方々には誠に申し訳なくただただお詫びする次第である.

  今回筆者が誤同定の大失敗をしてしまった原因を反省すると,日ごろ観察会などで「網を張らないクモは全体の半数ほどいるが,これらのクモも必ず糸は引く」と話しながら,基本の基ともいうべき,糸の確認を怠った事と,クモの個体確認のないまま同定してしまったという一番初歩的なことの確認をしなかったという醜態をさらけ出してしまった訳で,穴があったら入りたいどころか穴を掘って入りたい気持ちで一杯であり,日頃の不勉強をさらけ出したことにただただ恥じ入るばかりであるが,あるいは老耄の末のことであったかもしれないとも思っている.

記念写真   朝からの梅雨曇りで一時ぱらついたが,まあまあの天候での採集観察会は,カネコトタテグモは確認できず,ワスレナグモも誤同定であっという芳しからぬ結果の1日であった.とりわけ筆者には慙愧と反省の日であった.  [太田 記]


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